自己PRの欄を開いたまま30分経過した、という経験は珍しくありません。ゼロから文章をひねり出すのは誰にとってもきついので、AIにたたき台を作らせるのは合理的な選択です。ただしAIが出した文をそのまま提出すると、かえって落ちやすくなります。この記事では、AIに自己PRを作らせる手順と、出てきた文を通る文に直す具体的な直し方を解説します。
この記事のポイント
- ✓AIは「たたき台を作る道具」。完成品を作る道具ではない
- ✓材料(経験・数字・応募先)を渡さないと、当たり障りのない文しか出てこない
- ✓AIの文に欠けるのは「具体的な体験」と「数字」。ここは自分で足す
- ✓そのまま提出すると、面接で深掘りされたときに答えられなくなる

AIに自己PRを任せていいのか
たたき台を作らせるのは問題ありません。むしろ、白紙を前に固まっているより、AIに雑な案を出させて直していくほうが早く仕上がります。企業も「AIを使ったから不合格」という判断はしません。問題になるのは、AIが書いた文を一度も自分の言葉に直さずに提出したときです。
AIが得意なこと・苦手なこと
- ✓得意:文章の骨組みを作る、言い回しを整える、長さを調整する
- ✓得意:ばらばらの経験を、読みやすい順番に並べ直す
- ✓苦手:あなたの具体的な体験を知ること(渡さない限り書けない)
- ✓苦手:数字や固有名詞を出すこと(渡さないと作り話になる)
材料を渡さないと、薄い文しか出てこない
「自己PRを書いて」とだけ頼むと、誰にでも当てはまる文が返ってきます。「責任感があり、周囲と協力しながら業務に取り組んでまいりました」のような文です。読んだ担当者の印象に何も残りません。差が出るのは、渡す材料の量です。
| 渡す材料 | 渡さないと | 渡すと |
|---|---|---|
| 具体的な経験 | 抽象的な人柄の話で終わる | 場面が浮かぶ文になる |
| 数字(件数・金額・人数・期間) | 「頑張った」で止まる | 実績として読める |
| 応募先の職種・業務内容 | どの会社にも出せる文になる | 応募先向けの文になる |
| 直したい点(長い・硬いなど) | 調整されない | 狙った長さ・トーンになる |
渡す材料の集め方
うまい文章を考える必要はありません。箇条書きのメモで十分です。「前職は携帯ショップの販売」「1日20人ほど接客」「在庫管理も担当」「クレーム対応で店長賞をもらった」——この程度の粗いメモでも、AIは十分に組み立てられます。きれいに書こうとせず、事実だけ並べてください。
AIに渡す指示のテンプレート
次の形で頼むと、使えるたたき台が出てきます。空欄を自分の情報で埋めてください。
そのまま使える指示文
- ・以下の情報をもとに、履歴書の自己PRを300字程度で書いてください。
- ・【応募先】○○(業種・職種)
- ・【これまでの仕事】○○(会社・職種・年数)
- ・【具体的にやったこと】○○、○○(箇条書きで3つほど)
- ・【数字で言えること】○○(件数・金額・人数・期間など)
- ・【入社後にやりたいこと】○○
- ・誇張はせず、事実の範囲で書いてください。
最後の一文が効く
「誇張はせず、事実の範囲で書いてください」を入れておくと、盛られた表現が出にくくなります。AIは頼まれると話を大きくしがちなので、先に釘を刺しておきます。

出てきた文を直す4ステップ
ここが一番大事な工程です。AIの出力は「7割の状態」だと思ってください。残りの3割を自分で入れることで、はじめて提出できる文になります。
- 1
① 具体的な場面を1つ入れる
「お客様に寄り添った対応を心がけました」だけでは弱い。「商品選びに迷っていた高齢のお客様に30分かけて説明し、後日ご家族を連れて来店いただいた」のように、実際にあった場面を1つ入れます。ここが文章の芯になります。
- 2
② 数字を入れる
件数・金額・人数・期間・順位。どれか1つでも入ると、読み手の受け取り方が変わります。正確な数字がわからなければ「月20件程度」のように概算で構いません。ただし盛らないこと。
- 3
③ 応募先に合わせて言い換える
AIが書いた一般的な言葉を、応募先の仕事で使う言葉に置き換えます。求人票に出てくる表現を拾って使うと、読んだ担当者が自社の業務と結びつけやすくなります。
- 4
④ 声に出して読む
自分が普段使わない言葉が混じっていたら、その部分だけAIの文が残っています。面接で同じ話を口頭でできるかどうかが基準。読んで違和感がある表現は、自分の言い方に直します。

AIの文をそのまま出すと何が起きるか
書類は通ることもあります。問題は、そのあとの面接です。
避けたいNG
- ✕出てきた文を一度も読み返さずに貼り付ける
- ✕実際にはやっていない経験が混ざったまま提出する(面接で必ず露見する)
- ✕複数の応募先に、まったく同じ文を使い回す
- ✕「貴社」「御社」の使い分けを直さないまま出す(書類は「貴社」)
現場の視点:面接で必ず崩れる
キャリアアドバイザーとして面接後のフィードバックを企業から受け取っていると、「書類と本人の印象が違う」という指摘が出ることがあります。たいていの原因はこれです。自己PRに書いた強みについて「具体的にどんな場面でしたか」と聞かれたときに答えられない。書いたのが自分ではないので当然です。面接官は意地悪をしているのではなく、書かれた内容を確かめているだけです。書類は自分で説明できる範囲に収めてください。
文章がうますぎるのも引っかかる
経験の浅い応募者の書類に、やたら整った文章が入っていると、逆に不自然に見えます。多少ぎこちなくても、具体的な体験が入っている文のほうが信用されます。上手に書くことが目的ではありません。
志望動機もAIで作れるか
作れますが、自己PR以上に材料が必要です。志望動機は「なぜその会社なのか」が中心で、これはあなたが調べないとAIには書けません。求人票や採用ページを読んで、共感した点・気になった点をメモしてからAIに渡してください。会社名だけ伝えて書かせると、どの会社にも出せる文が返ってきます。
まとめ|AIは下書き係、仕上げは自分
AIを使うこと自体に問題はありません。白紙から書き始めるより、はるかに早く形になります。ただし出てきた文は下書きです。具体的な場面を1つと、数字を1つ入れて、声に出して読んで違和感を消す。この3つをやるだけで、提出できる文に変わります。面接で自分の言葉として話せる状態になっているか。それが最終的な合格ラインです。
よくある質問
Q.AIで書いた自己PRだと、企業にバレますか?
A.文章だけで断定はされません。ただし面接で内容を掘り下げられたときに答えられないと、そこで違和感を持たれます。バレるかどうかより、自分で説明できる内容にしておくことが大事です。
Q.AIを使うのは不正になりませんか?
A.なりません。文章作成の道具を使うことは問題視されていません。経歴を偽ることが問題なのであって、書き方を助けてもらうこと自体は不正ではありません。
Q.自分の経験に自信がなく、書くことがありません。
A.特別な実績は必要ありません。日々の業務で工夫したこと、続けてきたこと、任されるようになったことで十分です。まず事実を箇条書きにして、それをAIに渡してください。材料が少ないと感じても、書き出すと意外に出てきます。
Q.何文字くらいで書けばいいですか?
A.履歴書の自己PR欄なら200〜300字が目安です。欄の大きさに対して極端に少ないと意欲が低く見え、あふれると読みにくくなります。欄の8割程度が埋まる分量が適量です。

この記事の監修
SHIMA ENAGA現役キャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント
人材紹介会社の現役キャリアアドバイザー。面談約1,000人、書類の添削・作成約800人。国家資格キャリアコンサルタント。得意な分野は20代の未経験転職。接客販売・営業・事務・ITエンジニア・施工管理など。