転職回数が多いと、書類の段階で不利になるのではないかと不安になります。実際に採用側は回数を気にしますが、警戒しているのは回数そのものではなく「またすぐ辞めるのではないか」という点です。つまり、続く理由を示せれば回数は決定打になりません。この記事では、職歴欄の見せ方と退職理由の書き方を、見本つきで解説します。
この記事のポイント
- ✓採用側が見ているのは回数ではなく、早期離職の再発リスク
- ✓職歴は省略も虚偽もしない。全て書いたうえで濃淡をつける
- ✓バラバラに見える経歴も、軸を1つ通せば一貫性が生まれる
- ✓退職理由は前向きに言い換える。ただし嘘はつかない

採用側が本当に気にしていること
転職回数が多い応募者に対して、採用側が抱く懸念は具体的です。ここを先回りして解消すれば、回数は問題になりにくくなります。
採用側の懸念
- ✓またすぐ辞めるのではないか(採用と教育のコストが無駄になる)
- ✓職場に馴染めない理由があるのではないか(人間関係の問題)
- ✓何がしたいのか定まっていないのではないか(キャリアの一貫性)
- ✓スキルが中途半端なのではないか(どこも短くて身についていない)
回数の基準は業界による
何回から多いとされるかに明確な基準はありません。同じ回数でも、業界や年代によって受け取られ方が変わります。人の流動が活発な業界では気にされにくく、長期勤続が前提の業界では厳しく見られます。応募先の業界の常識を意識してください。
職歴は省略しない
回数を減らして見せたくなりますが、職歴の省略は避けてください。入社の手続きで出す雇用保険被保険者証や源泉徴収票から前の勤め先が分かることがあり、入社後に発覚すると経歴詐称として扱われるおそれがあります。
やってはいけないこと
- ・短期間の在籍を書かずに飛ばす → 経歴詐称になりうる
- ・在籍期間を実際より長く書く → 同上
- ・複数社をまとめて1社のように書く → 同上
- ・アルバイトだったことにする → 事実と違えば同じ問題
書いたうえで濃淡をつける
全て書くことと、全てを同じ分量で書くことは別です。応募先に関係する経験は詳しく、関係の薄い経験は短くまとめます。これは省略ではなく、読み手のための整理です。履歴書は事実を並べ、職務経歴書で濃淡をつけるのが基本の分担になります。

履歴書の職歴欄の書き方
社数が多い場合、1社あたりの行数を抑えて全てを収めます。仕事の内容は会社名の後ろに括弧で短く添え、説明だけの行を作らないのが有効です。
記入例(行数を抑える書き方)
- ・2016年4月 株式会社○○ 入社(電子部品の法人営業)
- ・2018年3月 一身上の都合により退職
- ・2018年4月 △△株式会社 入社(産業機器の法人営業)
- ・2021年8月 会社都合により退職(事業所閉鎖のため)
- ・2021年9月 株式会社□□ 入社(医療機器の法人営業)
- ・2026年6月 一身上の都合により退職
- ・ 以上
会社都合は明記する
倒産、事業所の閉鎖、人員整理など、会社の事情による退職は「会社都合により退職」と書き、括弧で理由を添えてください。契約社員や派遣で期間が終わって辞めたときは「契約期間満了により退職」と書きます。どちらも自分の都合で辞めたのではないと伝わり、「すぐ辞める人」という印象を和らげられます。
社内の異動や出向は転職ではない
社内の異動やグループ会社への出向を転職として書くと、回数が水増しされます。「同社○○支店へ異動」「株式会社△△へ出向」のように、元の会社の在籍のまま書いてください。
経歴に軸を1本通す
回数の多さを打ち消す最も有効な方法が、経歴に一貫性を見出すことです。バラバラに見える職歴でも、共通点は必ずあります。
軸を示す一文の例
- ・「業界は変わっておりますが、一貫して法人向けの提案営業に携わってまいりました」
- ・「職種は複数経験しておりますが、いずれも医療機関を顧客とする仕事で、業界知識を積み上げてまいりました」
- ・「どの職場でも、属人化していた業務を手順化する役割を担ってまいりました」
- ・志望動機の例:「法人営業として3社で10年、業界は違っても新規開拓を続けてきました。貴社は医療機関と長く取引を続ける営業をしており、1社と長く向き合う営業で腰を据えたいと考え志望しました」
| 軸の取り方 | 使える場面 |
|---|---|
| 職種の一貫性 | 業界は変わったが、営業として一貫している |
| 業界の一貫性 | 職種は変わったが、医療業界に関わり続けている |
| 顧客層の一貫性 | 一貫して法人向け、または個人向けを担当してきた |
| スキルの一貫性 | どの職場でも、業務の仕組み化に取り組んできた |
| 段階的な発展 | 規模の小さい会社から大きい会社へ、担当範囲を広げてきた |
退職理由の書き方
履歴書には「一身上の都合により退職」で構いません。詳しい理由は職務経歴書か面接で説明します。書く場合は、前向きに言い換えたうえで、嘘はつかないでください。
| 本当の理由 | 言い換え |
|---|---|
| 給与が低かった | 成果が評価に反映される環境で働きたいと考えた |
| 人間関係が悪かった | チームで成果を出す働き方を重視したいと考えた |
| 残業が多すぎた | 長期的に力を発揮できる働き方を選びたいと考えた |
| 仕事が合わなかった | ◯◯の経験を活かせる分野に軸足を移したいと考えた |
| 会社の将来性が不安 | 事業の成長に自分の経験を活かせる環境を求めた |
言い換えと嘘は違う
「人間関係が悪かった」を「チームで成果を出す働き方を重視したい」と書くのは言い換えです。事実の側面を変えているだけで、嘘はついていません。一方、実際は解雇されたのに自己都合と書くのは虚偽です。この線は越えないでください。
現場の視点:懸念は先回りして潰す
キャリアアドバイザーとして転職回数の多い方を支援していて、効果が明確な進め方が1つあります。書類の段階で懸念に自分から触れることです。職務経歴書の冒頭に「複数社を経験しておりますが、いずれも法人営業として一貫しております。うち1社は事業所の閉鎖による退職です」と2行入れておきます。これだけで採用担当者が抱く疑問の大半が先に解消される、というのが支援の現場での実感です。触れずにいると面接まで疑問が残り、そこで初めて質問されて身構えることになります。先に書いておくほうが、はるかに有利に進みます。
面接での答え方
転職回数については、面接で質問されるものと考えておきます。答え方を用意しておけば、その場で慌てずに済みます。
答え方の型
- ・① 事実を簡潔に認める(「回数が多いことは事実です」)
- ・② 一貫している軸を示す(「いずれも法人営業として一貫しております」)
- ・③ 直近の退職理由を具体的に(会社都合ならそう明言する)
- ・④ 次は続ける根拠を示す(何を基準に応募先を選んだか)
④が最も重要
「今度こそ長く働きたいです」だけでは根拠になりません。何を基準に応募先を選んだのかを具体的に語ってください。「これまで業務内容を十分に確認せずに入社していたため、今回は事前に職場見学をお願いしました」のように、選び方を変えたという事実が示せると、再発しないという説明になります。

空白期間があるときの書き方
転職回数が多い人は、会社と会社の間に空白期間ができていることも多いはずです。採用担当者は年月を順に追って読むので、空白は必ず目に入ります。面接で聞かれる前提で、説明を用意しておきます。
空白期間の説明の例
- ・「2024年4月から10月までは、宅地建物取引士の資格取得に専念しておりました(2024年11月合格)」
- ・「2023年は家族の介護のため離職しておりました。現在は介護の体制が整い、フルタイムでの勤務が可能です」
- ・「体調を崩して療養しておりましたが、現在は完治し、勤務に支障はありません」
履歴書の職歴欄には空白の理由を書かない
職歴欄は入社と退職の事実を書く欄です。空白期間の行を作って理由を書く必要はありません。3か月を超える空白があるなら、職務経歴書の最後か本人希望記入欄に、何をしていたかを1行で添えます。
説明は「何をしていたか」と「今は働ける」の2点
資格の勉強、家族の介護、病気の療養など、理由は事実のまま短く書きます。そのうえで「現在は勤務に支障はありません」と今の状態を添えると、読み手の不安はほぼ消えます。
職務経歴書はキャリア式でまとめる
職務経歴書の書き方には、会社ごとに年代順に並べる「編年体式」と、仕事の種類ごとにまとめる「キャリア式」があります。社数が多い人は、キャリア式を選ぶと同じ仕事を続けてきたことが一目で伝わります。
職務要約の例
- ・同じ職種を続けてきた人:「大学卒業後、電子部品・産業機器・医療機器の3社で、法人向けの提案営業に10年携わってまいりました。いずれも新規開拓が中心で、直近の会社では担当エリアの売上を2年で1.3倍にしました」
- ・職種が変わってきた人:「販売職として店舗運営を4年、その後は人材会社で求人広告の営業を3年経験しました。一貫して、相手の困りごとを聞き取って提案する仕事に取り組んでまいりました」
| 書き方 | 向いている人 |
|---|---|
| 編年体式(会社ごと・古い順) | 社数が2〜3社で、在籍期間がそれぞれ長い人 |
| 逆編年体式(会社ごと・新しい順) | 直近の仕事が応募先にいちばん近い人 |
| キャリア式(仕事の種類ごと) | 社数が多い人、同じ職種を複数の会社で続けてきた人 |
冒頭の職務要約で軸を言い切る
職務経歴書の最初の3〜4行が職務要約です。ここで「何の仕事を何年続けてきたか」を先に書きます。採用担当者は要約で読み方を決めるので、社数より先に軸が目に入るようにします。
本人希望記入欄で長く働く意思を示す
本人希望記入欄は、勤務地や職種の希望を書く欄です。特に希望がなければ「貴社規定に従います」で構いません。転職回数が多い人は、ここに1文足して、今回の応募にかける考えを伝える方法もあります。
本人希望記入欄の例
- ・「貴社規定に従います。これまでの法人営業の経験を活かし、腰を据えて長く貢献したいと考えております」
- ・「営業職を希望いたします。勤務地は貴社規定に従います」
書きすぎない
本人希望記入欄は志望動機の欄ではありません。思いを長く書くと、かえって必死な印象になります。書くなら1〜2文にとどめ、詳しいことは志望動機の欄と面接に回します。
まとめ|全部書いて、軸を通して、先回りする
転職回数の多さは、それ自体では決定打になりません。問題になるのは、隠すこと、一貫性が見えないこと、次も辞めそうに見えることです。職歴は省略せず全て書き、会社都合の退職は明記する。バラバラに見える経歴に軸を1本通す。そして懸念に自分から触れて、次は続く根拠を示す。この3つを揃えれば、回数の多さは読み手の関心事ではなくなります。
よくある質問
Q.副業やフリーランスの経験は書きますか?
A.応募先の仕事に近い実績があるなら、職務経歴書に書きます。副業を認めていない会社に応募するときは、入社後の扱いを面接で聞かれる前提で考えを用意しておきます。
Q.転職回数には何を数えますか?
A.一般には、正社員として勤めた会社を移った回数を数えます。契約社員や派遣、卒業後のアルバイトを含めるかは会社によって違います。学生時代のアルバイトや、同じ会社の中での異動・出向は数えません。職歴欄には、雇用形態が分かるように書いておきます。
Q.試用期間中に辞めた会社も書きますか?
A.書きます。試用期間中でも雇用契約を結んで働いていたので、職歴になります。「入社」「一身上の都合により退職」と、ほかの会社と同じ形で書いてください。
Q.派遣社員や契約社員の経験はどう書きますか?
A.派遣社員は「株式会社○○より△△株式会社に派遣(一般事務)」のように、派遣元と派遣先の両方を書きます。契約社員は、会社名のあとに「(契約社員)」と添えるのが一般的です。契約期間が終わって辞めたときは「契約期間満了により退職」と書くと、自分の都合で辞めたのではないと伝わります。
Q.職歴欄に全部書ききれないときはどうしますか?
A.職歴の行が多い様式を使うか、仕事の内容を会社名の後ろに括弧で添えて、説明だけの行を省きます。それでも入らないときは、職歴欄の最後に「詳細は職務経歴書に記載」と書き、職務経歴書にすべての会社を載せます。
Q.転職回数は何回から多いとされますか?
A.明確な基準はありません。業界や年代によって受け取られ方が変わり、人の流動が活発な業界では気にされにくい傾向があります。回数そのものより、一貫性と定着の見込みが判断材料になります。
Q.短期間で辞めた会社を書かなくてもいいですか?
A.書いてください。入社の手続きで出す書類から前の勤め先が分かることがあり、省略すると経歴詐称として扱われるおそれがあります。全て書いたうえで、応募先に関係の薄い経験は短くまとめてください。
Q.会社都合の退職はどう書きますか?
A.「会社都合により退職」と明記し、括弧で「事業所閉鎖のため」などの理由を添えてください。書かないと自己都合の退職と区別がつかず、すぐ辞める人だと受け取られやすくなります。
Q.退職理由に本当のことを書くべきですか?
A.前向きに言い換えて構いませんが、嘘はつかないでください。「人間関係が悪かった」を「チームで成果を出す働き方を重視したい」と書くのは言い換えですが、解雇を自己都合と書くのは虚偽になります。
Q.経歴に一貫性がない場合はどうすればいいですか?
A.職種、業界、顧客層、身につけたスキル、担当範囲の広がりなど、複数の切り口で共通点を探してください。どれか1つは必ず見つかります。それを冒頭で一文にして示してください。

この記事の監修
SHIMA ENAGA現役キャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント
人材紹介会社の現役キャリアアドバイザー。面談約1,000人、書類の添削・作成約800人。国家資格キャリアコンサルタント。得意な分野は20代の未経験転職。接客販売・営業・事務・ITエンジニア・施工管理など。