看護師の転職では、資格があれば書類は通ると思われがちですが、実際には志望動機で差がつきます。採用側が見ているのは「配属後に問題なく働けるか」の一点で、そのために経験してきた診療科・患者層が自院と合うかを確認しています。この記事では、転職先の種類ごとの違いを踏まえた志望動機の書き方と、例文4パターンを解説します。
この記事のポイント
- ✓採用側は「即戦力になるか」「自院の患者層と合うか」を見ている
- ✓急性期・慢性期・クリニック・訪問看護・介護施設で求められる経験が違う
- ✓病床数・診療科・看護方式・夜勤体制を書くと、経験の中身が伝わる
- ✓看護観と応募先の理念を接続できると、志望度の高さが伝わる

採用側が志望動機で見ている5点
看護師の中途採用で採用担当が確認しているのは、配属後に問題なく働ける人材か、即戦力になりそうかという点です。志望動機は熱意を語る場ではなく、この判断材料を渡す場だと考えてください。
書類で確認されていること
- ✓経験してきた診療科・病棟の特徴・患者層が、自院と合致しているか
- ✓担当してきた業務の範囲と役割(夜勤、急変対応、リーダー、プリセプター)
- ✓転職理由とキャリアの軸、看護観に一貫性があるか
- ✓多職種連携・チーム医療への適性があるか
- ✓文章が読みやすく、要点が整理されているか
クリニックではPCスキルも見られている
クリニックや美容クリニックのように、看護業務に加えて受付や事務作業が発生する職場では、書類そのものがPCスキルの判断材料になります。整った職務経歴書を作成できているかどうかで、基本的なパソコン操作ができる人かを見られている、という側面があります。
転職先によって求められる経験が違う
同じ看護師でも、転職先の種類によって業務内容も評価される経験もまったく違います。ここを踏まえずに書くと、応募先が求めていない経験ばかりを並べることになります。
| 転職先 | 主な業務 | 求められる経験 |
|---|---|---|
| 急性期 | 全身管理、術前術後看護、急変時対応、検査介助、夜勤 | 状態変化の早い患者への迅速なアセスメント、臨床判断力。リーダー業務や新人指導、急変対応の経験 |
| 慢性期・療養 | 長期療養患者の看護、ADL向上のリハビリ支援、褥瘡ケア、経管栄養、看取りケア | 医療依存度の高い患者への丁寧なケア技術、家族の心理的負担を理解した支援 |
| クリニック・外来 | 外来診療補助、採血、注射、慢性疾患患者への自己血糖測定・インスリン指導、受付対応 | 短時間で患者の状態と生活背景を把握する力、実践的な指導力、高いコミュニケーション能力 |
| 訪問看護 | 地域住民の在宅での健康サポート | 1人で判断する場面が多く、在宅での対応力 |
| 介護施設(老健など) | 全身状態のアセスメント、リハビリのリスク管理、多職種連携での健康管理 | 病院での急性期・回復期の経験を、在宅復帰支援のリスク管理に転用できること |
急性期から介護施設への転職は不利ではない
「急性期を離れると評価が下がる」と考える人がいますが、老健などの介護施設では、病院で培ったアセスメント力とリスク管理能力がそのまま評価されます。リハビリを安全に継続させるための判断ができる看護師は施設側にとって貴重です。経験を捨てる転職ではなく、活かす場所を変える転職だと位置づけて書いてください。

経験を具体的に書く4つの項目
「内科病棟で5年勤務」だけでは、どんな環境で何をしてきたかが伝わりません。次の4つを添えると、経験の中身が一気に伝わります。
志望動機・職務経歴書に入れる項目
- ・病床数と診療科:どんな規模の医療環境にいたかが伝わる(例「急性期40床の内科病棟」)
- ・看護方式:プライマリーナーシング/チームナーシング/PNS など、配属先の看護環境
- ・夜勤の有無と体制:夜勤回数、2交替か3交替か、夜勤リーダーの経験
- ・役職・役割:リーダー業務、主任、プリセプター、委員会活動、看護研究、学会参加
資格の書き方
資格欄には取得年月とともに「看護師免許」と正式名称で記載します。認定看護師・専門看護師、特定行為研修修了、BLS/ACLSなどは大きなアピールになるので、正式名称と取得年月を省略せずに書いてください。
【例文1】急性期から慢性期・療養へ
転職先の性質が変わる場合、なぜ変えたいのかを前向きに説明できるかが分かれ目です。「急性期がきつかったから」ではなく、看護観の変化として書きます。
例文
- ・患者様お一人おひとりと長く関わる看護に取り組みたいと考え、貴院を志望しました。
- ・急性期40床の消化器内科病棟で5年間、チームナーシングのもとで術前術後の看護と急変時対応を担当し、直近2年は日勤リーダーを務めてまいりました。回復して退院される患者様を見送るなかで、退院後の生活まで見据えた関わりができないことに物足りなさを感じるようになりました。
- ・貴院は在宅復帰を見据えた療養看護に力を入れておられ、ご家族への支援体制も整っていると伺いました。急性期で培った状態変化を早期に捉えるアセスメント力を、療養の場でのリスク管理に活かし、患者様とご家族の双方を支える看護に取り組みたいと考えております。
【例文2】病棟からクリニック・外来へ
外来は短時間で判断し、生活背景まで踏まえて指導する場です。病棟での丁寧な関わりをそのまま持ち込むのではなく、外来の性質を理解していることを示します。
例文
- ・患者様の生活に踏み込んだ指導を通じて、疾患の重症化を防ぐ看護に関わりたいと考え志望しました。
- ・急性期病院の糖尿病内科病棟で6年間勤務し、インスリン導入時の指導と血糖管理を担当してまいりました。入院中に指導した患者様が、生活習慣が戻って再入院されるケースを繰り返し経験するなかで、外来で継続的に関わることの重要性を強く感じるようになりました。
- ・貴院は生活習慣病の外来指導に注力され、管理栄養士との連携体制も整っていると伺いました。病棟で培った指導経験を活かし、限られた診察の時間のなかでも患者様の生活背景を捉えた助言ができる看護師を目指したいと考えております。
【例文3】ブランクからの復職
ブランクは隠さず書きます。採用側が知りたいのは空白があったかではなく、復帰に向けて何をしてきたかです。
例文
- ・育児が落ち着いたことを機に、これまでの経験を活かして看護の現場に戻りたいと考え志望しました。
- ・総合病院の整形外科病棟で7年間勤務したのち、出産を機に3年間現場を離れておりました。復職にあたり、県の看護協会が実施する復職支援研修を受講し、静脈注射と医療機器の取り扱いについて実技を含めて学び直しました。
- ・ブランクがあることは事実ですので、まずは先輩方に確認を重ねながら、確実に業務を覚えることを最優先に考えております。貴院は復職者への段階的な受け入れ体制が整っていると伺い、安心して力を戻していけると感じました。子育ての経験を通じて、ご家族の不安に寄り添う視点も持てるようになりました。ひとつずつ現場の感覚を取り戻し、長く貢献してまいりたいと考えております。
復職で書いておくと安心される内容
受講した研修名、学び直した具体的な項目、勤務可能な時間帯や夜勤の可否。この3つが書かれていると、採用側は受け入れ後の姿を具体的に想像できます。「頑張ります」という意欲より、この3点のほうがはるかに効きます。
【例文4】病院から介護施設(老健)へ
介護施設では、医療的な判断ができる看護師が求められています。病院経験を「活かせる強み」として提示します。
例文
- ・在宅復帰を目指す方の生活を、医療の視点から支える看護に取り組みたいと考え志望しました。
- ・急性期病院の脳神経外科病棟で8年間、脳血管疾患の患者様の急性期看護と早期離床の支援を担当してまいりました。リハビリに移行された患者様がその後どのような生活に戻られるのかを知る機会がなく、退院後を支える立場で関わりたいと考えるようになりました。
- ・貴施設は在宅復帰率の向上に力を入れ、リハビリ職と介護職との連携を重視していると伺いました。病棟で培った全身状態のアセスメントと、リハビリを安全に進めるためのリスク管理の視点は、貴施設でも活かせると考えております。多職種の皆様と情報を共有しながら、利用者様が安心して在宅に戻れる支援に貢献したいと考えております。
看護観をどう書くか
看護師の志望動機で特徴的なのが、看護観を求められる点です。立派な理念を掲げる必要はありません。これまでの経験のなかで印象に残っている場面を1つ挙げ、そこから何を大切にするようになったかを書けば、それが看護観になります。
現場の視点:一貫性が見られている
キャリアアドバイザーとして看護師の転職を支援していると、採用側が最も気にするのは経歴の華やかさではなく一貫性です。志望動機に書かれた看護観と、これまで選んできた職場と、これから選ぼうとしている職場に筋が通っているか。ここがつながっていれば、経験年数が短くても評価されます。逆に、看護観と応募先の性質がずれていると、入職しても続かないと判断されます。書き終えたら「この看護観の人が、なぜこの病院を選ぶのか」を自分で説明できるか確かめてください。
応募先の理念と接続する
病院や施設のホームページには必ず理念や看護部の方針が載っています。そこに書かれた言葉と、自分の看護観の重なる部分を1つ見つけて、志望動機のなかで触れてください。これがあるだけで「調べたうえで選んでいる」ことが伝わります。

看護師の志望動機でやりがちなNG
次の4つは、経験が十分な人でも評価を下げます。
避けたいNG
- ✕「スキルアップしたい」「学びたい」だけで終わる → 教育機関ではない。何を提供できるかを書く
- ✕前職の不満をそのまま書く(人間関係・激務・体制への批判)→ 早期離職を懸念される
- ✕診療科・病床数・役割に触れず「5年勤務」とだけ書く → 経験の中身が伝わらない
- ✕どの病院にも出せる文章 → 応募先の理念や特色に一言も触れていないと志望度が低いと見られる
まとめ|経験の中身を具体的に、看護観と接続する
看護師の志望動機は、資格の有無ではなく経験の中身で読まれます。診療科・病床数・看護方式・夜勤体制・役割を具体的に書けば、それだけで「配属後に働ける人か」の判断材料になります。そのうえで、これまでの経験から生まれた看護観と、応募先の理念の重なりを1つ示す。この2つが揃えば、転職先の種類が変わっても納得感のある志望動機になります。
よくある質問
Q.履歴書に看護師免許の番号は書くべきですか?
A.応募先から指定があった場合に記載してください。指定がなければ、資格欄には取得年月と「看護師免許」という正式名称を書けば十分です。免許番号は入職手続きの段階で確認されるのが一般的です。
Q.急性期から離れると、次の転職で不利になりませんか?
A.なりません。慢性期・クリニック・介護施設のいずれでも、急性期で培ったアセスメント力とリスク管理能力は評価されます。特に老健などの介護施設では、リハビリを安全に継続させる判断ができる看護師が求められています。
Q.ブランクがあることは隠したほうがいいですか?
A.隠さないでください。空白期間は経歴から明らかになりますし、隠すと不信感につながります。それより、復職に向けて受講した研修や学び直した内容を具体的に書くほうが、はるかに評価されます。
Q.看護観がうまく言葉にできません。
A.立派な理念を掲げる必要はありません。これまでの看護のなかで印象に残っている患者様との場面を1つ思い出し、その経験から何を大切にするようになったかを書けば、それが看護観になります。
Q.志望動機は何文字くらいが適切ですか?
A.履歴書の欄なら200〜300字、職務経歴書に書く場合は300〜400字が目安です。欄に対して8割程度が埋まる分量にしてください。

この記事の監修
SHIMA ENAGA現役キャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント
人材紹介会社の現役キャリアアドバイザー。面談約1,000人、書類の添削・作成約800人。国家資格キャリアコンサルタント。得意な分野は20代の未経験転職。接客販売・営業・事務・ITエンジニア・施工管理など。